現代日本〈映画-文学〉相関研究会

Studies in Correlation between Modern Japanese Cinema and Literature

第6回 現代日本〈映画-文学〉相関研究会 開催のお知らせ(終了)

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【研究発表】

ゴジラ、アメリカに上陸 ―反戦原子力のアナロジーからアメリカの文化的イコンへ―
二松學舍大学非常勤講師     志村三代子
1970年代の勅使河原宏監督作に見る安部公房との協働の影響
信州大学助教          友田 義行
漫画映画とTVアニメを結ぶもの ―政岡憲三の『漫画映画入門』と『政岡憲三動画講義録』の分析から―
甲南女子大学非常勤講師     萩原由加里

【ラウンドテーブル】

1)後期小津映画と『宗方姉妹』

早稲田大学助手         宮本 明子

2)1970年代の『犬神家の一族』映像化作品について

甲南女子大学准教授       横濱 雄二

3)宮崎駿の弁別性 ―海外受容におけるポピュラリティから―

専修大学准教授       米村みゆき

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【発表要旨】

ゴジラ、アメリカに上陸 ―反戦原子力のアナロジーからアメリカの文化的イコンへ―
二松學舍大学非常勤講師     志村三代子
 1954年11月3日に公開され、大ヒットを記録した東宝の『ゴジラ』は、わずか2万5000ドルで北米での興行権が買い取られ、レイモンド・バーが演じるアメリカ人特派員を主人公に据えた吹替えと再編集を経て、”Godzilla King of Monsters!”(日本公開題名『怪獣王ゴジラ』)として1956年4月27日、ニューヨークに上陸を果たした。黒澤明の『羅生門』が1951年にヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したのを機に、日本映画の海外進出の機運が高まったが、ゴジラがアメリカにわたった経緯もそのような海外戦略の延長線上にあった。
 本発表では、1950年代前半の日本映画輸出の草創期に注目し、ゴジラ輸出の軌跡を調査するとともに、現在までに28作品ものリメイク作品が公開され、さらに反復されるイメージに関して様々な文学的想像力を生み出した日本のゴジラとは対照的に、青少年向けのモンスター映画としてはじまった”Godzilla King of Monsters!”がいかにしてアメリカの文化的イコンへと変遷を遂げたのかを明らかにする。

1970年代の勅使河原宏監督作に見る安部公房との協働の影響
信州大学助教          友田 義行

 1960年代、原作者・脚本家としての安部公房と、演出者としての勅使河原宏は、約二年間隔で劇映画作品を発表してきた。しかし、1968年劇場公開の『燃えつきた地図』、1970年大阪万博公開の『1日240時間』を最後に、二人の協働映画は実質的に終わりを告げる。その後、1972年に勅使河原は、ジョン・ネースンの脚本で『サマー・ソルジャー』を発表する。この作品をそれまでの安部との協働作と比較考察するために、本発表では基礎的な情報を整理するところから始めたい。協働解体の理由と新規の展望、勅使河原プロダクションの戦略、勅使河原とネースンと安部の関係といった製作以前の状況から、幽閉・自由・失踪といったテーマの継承/変形や、ドキュメンタリー的手法の効果、同時代文学との比較までを視野に入れたい。この映画が描く脱走兵表象の意義を、安部を含めた同時代の映画/文学との比較から浮き彫りにすることが、現時点での最終目的である。

勅使河原宏の世界 DVDコレクション

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漫画映画とTVアニメを結ぶもの ―政岡憲三の『漫画映画入門』と『政岡憲三動画講義録』の分析から―
甲南女子大学非常勤講師     萩原由加里
 政岡憲三は、戦前から戦中を代表するアニメーション制作者の一人である。だが、政岡が活動していたのは1930年から50年にかけてであり、1963年に手塚治虫によってはじめられたTVアニメとは無縁の人物と考えられてきた。だが、政岡憲三は『政岡憲三動画講義録』(以下『動画講義録』と略す)というテキストを執筆し、TVアニメの制作スタジオでスタッフの養成にあたっている。
 この『動画講義録』とは、戦時中より執筆されていた『漫画映画入門』(未刊行)の原稿をベースとしている。『漫画映画入門』は、漫画映画の作画指導に限定せず、今村太平の『漫画映画論』を参考とした歴史の解説、さらに演出の指導ではヴントの心理学を紹介しており、内容は多岐にわたっている。
 本発表では、政岡憲三の足跡をたどるという作業を通して、手塚治虫以前・以降、さらに映画とTVといった形で、あたかも断絶しているかのように語られてきた日本アニメーション歴史観の再検討を試みるものである。

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【ラウンドテーブル】

後期小津映画と『宗方姉妹』

早稲田大学助手         宮本 明子

 小津安二郎監督『宗方姉妹』(1950年)を対象として、『晩春』(1949年)以降に確立されたとされる後期の小津の様式が、この作品にはどのようにみとめられるのかを考察する。映画は大佛次郎の同名の小説を原作としており、小津の他の作品とくらべると異質とみられてきた。それでは、この作品の異質さとはどのようなものか。そして、後期の小津に『宗方姉妹』はどのように位置づけられるのか。たとえば、高峰秀子演じる<娘>の役割に注目しながら、考察を試みる。

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1970年代の『犬神家の一族』映像化作品について

甲南女子大学准教授       横濱 雄二

 横溝正史犬神家の一族』は、市川崑による一連の金田一耕助ものの嚆矢(角川春樹事務所、1976年)であり、またセルフリメイク作(東宝、2006年)としても知られる。また1970年代のテレビドラマでは、古谷一行主演の「横溝正史シリーズ」の第一作(毎日放送、1977年4月)および、「火曜日の女」シリーズのひとつとして『蒼いけ
ものたち』(日本テレビ、1970年8月)がある。これらのうち、70年代の作品で映像の入手できるもの(角川版、毎日版)を中心に比較考察を試みる。

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3)宮崎駿の弁別性 ―海外受容におけるポピュラリティから―

専修大学准教授       米村みゆき

 高畑勲の演出によるテレビアニメ『赤毛のアン』(全50話、1979年)は、作家・西尾維新をして「徹底して原作通りのアニメ化」「読み終わったときの感想と、見終わったときの感想が、まるっきり同じになるほど」と言わしめたが、宮崎駿の演出方法―原作に対する取り組み―は高畑と大きく異なる。この点が海外における宮崎アニメのポピュラリティと関与していると考えられる。本発表では、英語圏における先行論文やレビューを踏まえつつ、『未来少年コナン』(全26話 1978年)等のスペクタクル等を再検討することで、1970年代末における高畑、宮崎の演出を比較したい。